No.1043 チマ・サンチュ
かきチシャ/ちま・さんちゅ
【品種特性】
[1]
 立性で、下葉を掻き取って使う。掻きチシャ。チシャの仲間の中では耐暑耐病性ともに強い。
[2]
 生葉は熱に強く主に焼肉を包んで食べるので、包菜=焼肉レタス=とも呼ばれる。ほかに茹でてお浸しにしたり、和え物、煮物、炒め物にも利用できる。
[3]
 茎チシャとも言い、アスパラガスに似た茎も食べられる。昔の日本では漬物や煮食等したようだが、現在はほとんど利用されない。

【栽培法】
[1]
 レタスに準じ、二、三月は室内で箱まきし、霜柱の立つ心配がなくなってから、畑に35cm間隔に定植する。
[2]
 四月直まきでは一ケ所4,5粒の点播とし、本葉4,5枚までに間引いて一株にする。
[3]
 八月高温とともに抽苔してくるので、種採りする場合以外は、それまでに収穫するようにする。
[4]
 八、九月の秋まきの場合、高温下でタネが二次休眠に入っていることもあるので、事前に一週間程度冷蔵庫に入れ、休眠を打破してからまくと良い。

基礎知識チマ・サンチュ=掻きチシャ=について

[学名]var.asparagina Bailey
    (「アスパラガスに似た」の意)
[英名]Asparagus Lettuce
[仏名]Romaine asperge,Laitues asperge
[独名]Spargelsalat

 キク科。チシャ=レタス(Lactuca sativa L.)の変種。掻きチシャ。(特に茎を食用にするものは茎チシャとも言う)
 チシャの原産地は地中海、近東、中央アジア、中国など諸説ある。

 チシャは古代エジプト時代から栽培され、ギリシャ・ローマ時代には一般に普及した。
 中国では唐代にチシャが記され、日本でも天平6年(734)の「造仏所作物帳」に1万4千把の収穫が記録されているが、これはいずれも掻きチシャであると言う。

 チシャは多く茎や葉を折ると乳状の液が出ることから東西共通に乳草と呼ばれ、転じた古名「知佐(チサ)」が訛ってチシャになったのが平安時代末期だというから、日本でも本当に歴史のある野菜であった。

 江戸時代には、新しく渡来した法蓮草を「赤チシャ」、ふだん草を「唐ヂシャ」、エンダイブを「苦チシャ」などと呼んだ。これをみても、いかに昔の人にとって、チシャが身近な野菜であったかがわかる。

 くどいようだが、遠く奈良朝以前から江戸時代まで、日本でチシャと言えば本種のような「掻きチシャ」のことであった。それが明治以後、サラダ菜の異名を持つ「ワィヤヘッド」が入り、戦後、進駐軍の特需により現在の結球性「レタス」が普及する中で、「掻きチシャ」は忘れ去られ、昭和30年代を最後に、まったく栽培されなくなっていた。

 近年(本当にここ1,2年)、「グリーンリーフ」という訳の解らない英語名で、または「チマ・サンチュ」という韓国名で、「焼肉を包んで食べる葉っぱ」として掻きチシャが突然復活したのは、サッカーブームのおかげであろうが、掻きチシャにとっては僥倖としか言い様のない不思議な現象であろう。(掻きチシャの仲間の茎チシャは「セルタス」の名前で以前からタネが売られているが、こちらはまだ普及に時間がかかりそうだ)

 ともあれ「チマ・サンチュ」は奇跡的に復活した日本古来の「掻きチシャ」である。生き残った在来品種であるかどうかはわからないが、キク科野菜であるからFi品種でないことは間違いない。

 千数百年間、日本の風土に馴染んできた野菜が復活を果たしたのだ。「チマ・サンチュ」またはただ単に「サンチュ」などという韓国名でなく、まして「グリーンリーフ」などという得体の知れない英語名でもなく、ちゃんとした日本語で呼ばれる野菜に育って欲しいものだ。

 

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