合同会社野口種苗研究所／代表　野口勲様

はじめまして、私は現在兵庫県神戸市の六甲山の山頂付近に住んでおります■田■太と申します、少し長くて申し訳ないのですが簡単に自己紹介をさせていただきます。
以前は、県内の神埼郡という谷間の農村の築150年という旧い茅葺き農家に借家人として住んでおり、田畑も付いていましたので主に自家用および近所の方とシェアする目的で1反ほどの小さな畑と果樹畑を15年ほどやっておりました。
そもそも私は医薬品の製造プロセス研究者で、新しい研究所を郊外に建てることになりその縁で知人を通じて田舎の農家に住むことになり、それまで全く農業はおろか野菜を育てた経験もありませんでした。
（父は結婚を機に神戸市に移ってくるまでは高知県の山間の農家の出身で、晩年は貸し農園で野菜など作っておりましたが、私は全く興味無くそれこそ「買った方がずっと効率的で美味しいじゃないか」と思っていたくらいです。）
私がその山村に転入してくるまで、40年間外部からの転入者が無くその時の転入者はご近所の医院のお医者様という集落でご近所の皆さんは最初は「なんだこのよそ者は？」と言うような興味半分、疑惑半分の目で見られていたようです。
その折にせっかく畑があるのなら、と"件のホームセンター”で購入した苗を適当に植えて、ネット情報で適当に育てていた最初の夏に獲れたトマトとキュウリにすっかり感動して、イロイロ作る様になったのです。
ですが、ご明察通りド素人の農作業は、今から私が思い出しても余りにも無知でめちゃくちゃな状態、丁度子供が幼稚園に通っていたことも有り見かねたご近所の農家の方が余った苗やお野菜を玄関先に置いていってくれたりするようになり、だんだんと教えていただける様になりました。
そこで色々なお野菜を大きな畑で栽培している農家さんが皆さん自宅の敷地内に10坪ほどの野菜畑をもち、別にお野菜を育てておられるのに気づきました。
やっぱり虫が付かない様に商品に使用する必要がある農薬などの影響を考えての事なのか？と思い「商品用の作物と自家用の栽培地は分けなきゃならないのですか？」と聞くと、「市場に出す野菜なんてまずくて食えん」と言われ、本当にビックリしました。
そのような中で、固定種や在来種（選抜をせず、実際には固定されるに至っていないが、地域でそれこそ明治時代から作られてきた品種）と、「農協で買う苗を使った商品栽培種」の違いを知り、また実際に食べてみて、それこそ「なんていうコクも深みも無い野菜を今までこれが普通だと思って食べてきたんだろう？」と心底からビックリし、またもし父が無くなる前に知ることが出来れば良かったのに、とも思いました。
そうこうするうちに、野口種苗さんの事をこれもご近所で熱心に完全な有機栽培をめざしておられる方からお教えいただき、最初にたしか「中生成功甘藍」「チンゲンサイ」「小松菜」「賀茂なす」などの種を購入させていただいたのが2005年頃と思います。
そう思えば、偶然にも私は野口様がネットでの種販売をはじめられた初期の頃にお世話になり、更にチンゲンサイは本業の農家の方からもお褒めいただいて、種の取り方も教えていただきました。
ただ、その時はアブラナ科の交雑を全く意識しておらず自家採取したたねから翌年植えたものは植物園の如く？バラエティに富んだ「なっぱ」が出来たのを想い出します。

長くなってしまいましたが、本題でございます。 私は仕事柄も医薬系の「理系」ですので大学では基礎科目としての遺伝学も学んでおり雑種強勢などは理解しておりましたが、野口様の著書やHPでの発信情報を知るまでは現在のF1の作出技術を全く知りませんでした。
そして奇縁？か、2006年にバイエルのドイツ本社に転職し、私は医薬部門でしたが、その際に当時世界で1，2を争う「総合化学企業」（今はそういうモデルは無くなりましたが）であったバイエル社が社運を賭してモンサントやカーギルとそれこそ「世界の覇権」を争っていた「種苗ビジネス」を目の当たりにする事ができました。
ライフサイエンスに身を置いてきた私自身、GMO作物には当然の事として強い拒否感を持っており、その根本は核技術と同じく「充分に人間が理解していない技術に基づく製品をこの世に広く散布すること」に対する危機感からです。
しかし一方では野口様の著作により知るまでは、雄性不稔を利用して大量生産するF1作物の技術、特にその特性が（ほぼ全て）ミトコンドリア異常による「種なしオス、おしべ」を選抜し、結果的に私たち家族は知らぬ間に「ミトコンドリア異常の生物産品を、いつからか日常的に摂取している、という事実は科学者としてそれこそ衝撃でした。
御著書にてご指摘の通り、一般的には「食べたものがそのまま身体に取り込まれるわけでは無い。ミカンばっかり食べると黄色くなる、という迷信と同様である」という高等動物の「消化分解、再構成」の基本を信じておりました。
しかし、これもご指摘があった"Prion"病は分子量は比較的小さいとはいえ、経口摂取したタンパク質がそのまま取り込まれてしまう、すなわちセントラルドグマの反証例となる事が医薬品分野でも法的に規定され、BSE/TSE Freeeである事を製造原料の必須案件とされる例も経験しました。

その中で、御著書が出版された頃には未知でありましたが近年、医療目的に特別な技術で精製されたミトコンドリアが従来の静脈注射投与や神経節注射投与以外に、「経鼻腔投与」(Intranasal)および「腸管内投与」(Intestinal )でも実験用マウスに対して投与したミトコンドリアの体細胞内侵入と増殖が確認され、将来のミトコンドリア治療の発展に大きく期待されている、という学術速報記事を読み、「まさか！」と驚愕しました。
しかし、これは既に検証された事実で有り「適切に準備されたミトコンドリアを経口摂取する事により患者の体細胞に移行して増殖し、将来はアルツハイマー病などのミトコンドリアが関与する難治性疾患の救世主となる可能性が有る」という事で、2015年以降世界中で急速にミトコンドリア療法研究が加速しております。
ということは、すなわちF1作物に起因する「食物として摂取する種が全く違う植物由来の異常ミトコンドリアが人体に及ぼす影響は無い」という前提が「崩壊する可能性」を示唆することになります。
これは、すなわち野口様が長年危惧しておられた「未知の危険性」への厳密な研究調査と評価が必要と考えられます。
しかし、ご存じの様に「膨大な既得権と既に世界広範に受け入れられている事実」に反する研究などには政府からもどこからも有効な資金はでないでしょうし、研究者自身が「非常に高い確率で研究者人生を棒に振る」覚悟を持っていなければ、「重大な実害が明白になる」までにっちもいかないと思われます。
その点不気味なのは、ご指摘のあった「中国でのF1コメの急速な減少」という、不可解な中国農業学者達の意見ですね。
長文、失礼いたしました。

このメールで結局お知らせしたかった事は、野口様からのインスピレーションで純粋に個人的興味でモニターしていたミトコンドリア関連の研究報告から、最近見つけた論文をご案内したかったのです。
これは英文の医療技術総説論文でしかも長文の大作であり、専門家の私でも読むのに骨が折れましたが、昨年2023年に2000年以降のミトコンドリアの医療に対する世界中の研究開発を網羅したとても有用な「総説論文」のリンクを添付します。
これはMednetに収録されて公開されており、世界中どなたでも無料で原文献pdfをダウンロードできますので、是非知人様、支援者様で邦訳、解説ができる方を見つけて概要だけでも野口様にお知りいただければと思います。
難病、高齢者病、特に現在治療法が無いアルツハイマー、パーキンソン氏病などを含めた多くの疾病がミトコンドリアの「自殺」細胞自殺のアポトーシスに併せて、ミトトーシスと名付けられ、弱ったミトコンドリアが内部の高エネルギーで細胞質に致死的な攻撃性を与える「酸化的リン酸化」のミトコンドリア自身の膜による保護が不完全になり自分が所属する母胎である細胞を殺してしまう、あるいは「何らかの原因で傷つき異常を来したミトコンドリアの増殖による」という機構の仮説も科学的に解説されており、更に膨大な最新（2023年）のミトコンドリア研究に関連する参考文献が網羅されています。
その中には、少数ながら日本の研究者も光彩を放っております。（ご存じとは思いますが、ルカサイエンスでGoogle検索を）
非常に参考になり、「あ、ボクの思っていた通りだ、ここまでこの分野（医療）では来ているのか」と膝を叩き、野口様にとってきっと美味しいお酒が（すこしだけ）飲めると思いますので、是非。
（どうしても難しい場合は僭越ながらお手伝い差し上げますが、現在の職務上訳文を公表することなどはできません）

ミトコンドリア医療総説論文へのリンク

では、長文メール失礼いたしました。

野口勲様　■田■太拝

追伸：
御著書を拝読し、若干のコメントを申し上げます。
「戦争が終わって余剰能力が農薬や化学肥料を作った」
これは、順序が逆です。
第1次大戦前後は欧州での化学工業技術にはそれほど大差無く、イタリア、ドイツが先行し、少し遅れて英国が追う、米国はまだまだ、と言う様な状況でした。
当時はリン肥料はグアノベースが唯一の資源で、そのためドイツは南太平洋（サイパン周辺）の孤島を占領し、欧州から大西洋を経由するチリとの貿易は窒素源（火薬源）のチリ硝石でした、でもその後ドイツのHarbar-Bosh法の空中窒素固定化で世界のトレンドが変わり、年産数千トン規模から数十万トン規模の化学肥料生産に移るわけです。さらに、初期殺菌殺虫剤の硫黄製剤、続く圧倒的効能を発揮する有機リン製剤はドイツにより実施され、その結果二流国のドイツが一気に技術でも国力でも「農業生産の牽引主」として世界第一の規模になった物です。
すなわち、戦争に要求される毒ガスや爆弾に要する火薬類の要求製造能力規模に比較すると、平時にその数十倍、数百倍の製造規模（数十万トン年）が必要となる化学肥料、農薬の基礎工業力とにより潤った国力を付けたドイツが第二次大戦初頭に悠々と（禁輸されガソリンを含め）工業の能力を発揮できる「基礎体力」があったことに他なりません。
また、有機リンやシアン土壌殺菌剤もドイツが戦前かなり前から農薬として開発し、その技術は米国、日本にもライセンス開示されていたのです。
ですので、化学肥料や農薬を大規模生産できる技術と「インフラ」を持っていた国が、禁輸されても痛くもかゆくも無く自国で戦争要求兵器を生産できた、という事が真相です。
それに比すると、日本のケースではイロイロ考えさせられます。

■田■太 様
野口種苗の野口 勲です。 素晴らしい密度の詰まったメールをありがとうございました。
まだ一瞥しただけですが、最近気になっていた情報が満載されていると感じました。
これからじっくりと勉強させて頂きたいと思っております。
また改めてお返事させて頂きたいと思っておりますが、取り急ぎ御礼のメールまで。
本当にありがとうございました。

以下に上記「ミトコンドリア医療総説論文」のGoogle Chromeによる日本語訳画像を載せます。

















結局、ミトコンドリア病を治療できるのはその患者の健康なミトコンドリアだけだから、脂肪からだろうが骨格筋からだろうが、患者の体を作る食べ物が健康なミトコンドリアによってできているということが重要なんだろうなあ。

野口種苗目次