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1999.9.28 狭山市笹井にて撮影 photo by Isao.Noguchi
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世にシンクイムシと呼ばれる虫の数は多い。中で、秋野菜の白菜、大根、キャベツ、かぶ、菜っぱ等、アブラナ科野菜につくのが、この虫。
普通ダイコンシンクイムシと呼ばれるが、正確には右図の蛾、ハイマダラノメイガの幼虫だ。
主に生育初期の葉の裏に卵が産みつけられ、孵化した幼虫は、上の写真のように中心の葉を綴じ合わせた中にいて芯部を食害する。
大きめに育った野菜につくと、葉柄に穴を開けて茎の中や、かぶなどでは根の中に侵入して、被害作物を食いつくしてしまう。
そして、老齢幼虫は土中で蛹となり、1〜2 週間で羽化し、羽化後二日目ぐらいから、夜間、葉裏にまた点々と産卵する。
(一匹が一株の葉裏に数百粒まとめて産卵するヨトウムシやネキリムシと違い、数粒ずつ移動しながら産みつけるので、
気が付いた時はすべての菜や大根類で大発生していることになる。また、夏〜秋が高温で雨の少ない年に大発生する)
通常年間 4〜5 世代交代すると言われるが、秋野菜の蒔き時である8月下旬から10月の発生が最も多い。主要害虫のひとつと言える。
埼玉県農林部の防除基準では、DDVP 乳剤(別名デス、ホスビットなど)、PAP 乳剤(エルサンなど)、サイアノックス乳剤の3種の有機リン系殺虫剤が適用を受けているが、綴じ合わせた葉の内側に潜むこの虫には、接触毒だけのDDVP より数日間の食毒効果も合わせ持つサイアノックスのほうが効果的だろう。(劇物扱いの前2種と違い、普通物なので専門店以外でも手に入れやすい)
予防薬としてはオルトラン粒剤が良い。播種時、および定植時に株元に撒いておいた白菜には、上記写真撮影の時もダイコンシンクイムシは発生していなかった。(根や葉から吸収されて、約3週間作物体内に残留して予防効果を発揮するので、その期間中は間引き菜など食べないようにするのは、言うまでも無い)
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ひとりごと]「白菜にスミチオンかけちゃったぃ」と、がっかりしているお客さまが、今日もひとり来た。
アブラナ科野菜とスミチオン乳剤の相性の悪さは、薬害の典型例として有名であり、菜園農家の常識のはずだが、
今年のようにいつまでも高温が続くと、虫も病気も大発生。気がつくと白菜の葉がアミ状になってたりして、
「コンチクショウ!」と、前後の見境も無く有り合わせの殺虫剤をかけてしまい、やがて枯れはじめた後で、
「しまった! スミチオンだった」と気付くケースが多いようだ。
「スミチオンをくれ」って来られるお客さまに、いちいち「なんにかけられますか?」と、うちで聞くのは、
こういうことがあるからなんですよ。(ほかにも八重桜と DDVP なんて、有名薬剤で相性悪いのあるし)
決して威張って言ってるんじゃないのです。(と、本人は思ってます)(1999.9.29)
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