40才以後①／装丁を担当した「蘭風逍遥」のこと
昭和59(1984)年、飯能市立図書館の赤田館長や後に飯能市長になる小山誠三さん、文化
新聞社印刷部の吉田 健さん等々、錚々たる先輩方に白羽の矢を立てられて、飯能一中
元校長の松田丑二先生著作集『蘭風逍遥』の装丁を担当することになった。雑誌編集の
仕事をしていても、装丁はデザイナー任せだったから、ゼロから勉強する必要があった。
判型・版面・本文用紙を決め、表紙や見返し、扉や口絵の用紙と写真を選び表紙を決定。
決めた用紙で製本所にツカ見本を作ってもらい、完成本の厚みに合わせて箱をデザイン。
出版社では他人任せだった作業を一々指定して、自分好みの本が仕上がっていく過程が、
けっこう楽しい。と、いうわけで、できた『松田蘭風(雅号)著作集』の装本外観が(下)。
自分ではけっこう満足できた本なのだが、旧制川越中学や飯能一中の卒業生たちからは、
なんの反響も聞こえてこなかった。(松田先生が住む飯能ではあまり配布されなかった？)
その代わり松田先生ご本人からはたびたびお手紙をいただき「静岡や群馬時代の同僚から
高尚典雅なご著書ご恵送を感謝。良い生徒を持たれてうらやましい」とか「アメリカ大使館
から連絡があり、全米国会図書館で永久保存したいので、送って欲しいと言ってきた」とか。
「全て貴君のご尽力のおかげです」と、ご本人に大層喜ばれたのだから、もって瞑すべしか。
考えてみると『蘭風逍遥』が刊行された時の松田先生は、御年73才。お若かったのだなぁ。